英のイラク戦争検証から何を学ぶか

マル激トーク・オン・ディマンド
 
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第511回(2011年01月29日)
イギリスにできてなぜ日本にできない
英のイラク戦争検証から何を学ぶか
ゲスト:小谷賢氏(防衛省防衛研究所主任研究官)、志葉玲氏(ジャーナリスト)
 
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 イラク戦争開戦から8年。アメリカとともにイラクに対する軍事行動に参加したイギリスで、参戦までの経緯が厳しく検証されている。この21日は、イラク戦争調査委員会にブレア元首相が喚問され、その模様がすべてインターネットで中継される中、委員たちからの厳しい質問に晒された。
 言うまでもないが、イラク戦争は当初その大義とされた大量破壊兵器が存在しなかったことを、既にアメリカ自身が認めている。また、9・11同時テロを実行したアルカイダイラクの関係も、何一つ立証されなかった。そのような理由から、イラク戦争の正当性には重大な疑義があることは言うまでもない。
 イギリスでは、当時のブレア首相はなぜイラク戦争を合法だと判断し、正当性のない戦争への参戦を決断したのかについて、今もって市民やメディアから多くの疑問が提示され、議会などが中心となってその検証を行ってきた。
 今回の検証委員会は、ブラウン首相が2009年に設置したもので、委員長を務めるジョン・チルコット枢密院議員(元北アイルランド事務次官)の名にちなんでチルコット委員会と呼ばれる。チルコット委員会は、イラク戦争参戦の決定に関わった閣僚や政府高官、軍関係者らからの証言や、機密に該当する分野の非公開ヒアリング、内部文書や書簡、メモの分析などを行ってきた。
 また最終報告には至っていないが、ここまでの調査で、イギリスのイラク戦争への参戦は、ブレア首相の個人的な価値観や思い入れに請うところが非常に大きかったことがすでに明らかになり、首相自身が補佐官たちの意見に大きく左右されていた可能性も大きいことがわかったという。
 ひるがえって、日本はどうだろうか。当時の小泉政権は開戦後すぐにイラク戦争への支持を表明し、イラク特措法を制定して自衛隊を現地に派遣した。昨年 12月になってようやく超党派の「イラク戦争検証を求める議員連盟」が発足するなどの動きが見られるものの、日本では政府、メディア、国民のいずれにも、イラク戦争の検証を強く求める機運は、今のところまったくと言っていいほど見られない。
 なぜイギリスではそこまで徹底した過去の検証が可能なのか。そして、なぜ日本にはそれができないのか。
 インテリジェンスの専門家で、防衛研究所主任研究官の小谷賢氏と、イギリスの検証委員会を取材してきたジャーナリストの志葉玲氏と共に、現在イギリスで進められているイラク戦争検証の現状と、そこから日本が学ぶべきことについて議論した。

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