あえて最悪のシナリオとその対処法を考える

マル激トーク・オン・ディマンド更新しました。


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今週のマル激トーク・オン・ディマンドは特別編成のため、無料で放送いたします。
また、ニュース・コメンタリーはお休みしましたので、予めご了承下さい。


■マル激トーク・オン・ディマンド 第519回(2011年03月25日)
特別番組 あえて最悪のシナリオとその対処法を考える
出演:飯田哲也氏(NPO環境エネルギー政策研究所所長)、小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)、矢ヶ崎克馬氏(琉球大学名誉教)、松井英介氏(元岐阜大学医学部助教授)、青木理(ジャーナリス)、宮台真司社会学者、首都大学東京教授)、神保哲生(ビデオニュース・ドットコム代表)


 福島第一原発の復旧に当たっていた作業員が被曝し、タービン建屋内の水から通常の1万倍の放射能が検出されるなどの事態を受けて、原子力安全・保安院は25日、ついに「原子炉のどこかが損傷している可能性が十分にある」ことを認めた。実際には津波や相次ぐ爆発、海水注入や放水などの影響で、ほとんど全ての計器類が止まっているため、政府も東電も肝心の原子炉が現在どのような状態にあるのかを正確には把握できていないのが実情のようだ。
 大量の核燃料が入った原子炉が損傷を受け、しかもそこから核燃料が漏れ出している可能性がある。にもかかわらず、「確認ができないので不確かな情報は出せない」というのが政府・東電の一貫した態度だ。果たして本当にそれでいいのだろうか。しかも、燃料漏れが指摘される福島第一原発3号機は、プルトニウムを含むMOX燃料を使ったプルサーマル原子炉なのだ。
 不必要な不安を掻き立てることは避けなければならない。しかし、人体や環境に長期にわたり不可逆的かつ深刻な被害をもたらす原発事故は、予防原則の立場に立ち、常に「最悪の事態」を想定して対応する必要がある。
 そこで今週のマル激は、25日(金)21:00から4時間にわたる生放送で、ここまで確認された情報をもとに、現在の原子炉がどのような状態にあるのか、そこから想定し得る「最悪の事態」は何なのかを専門家らとともに検証した。
 後半は、「最悪の事態」にどう対応すべきかについて、放射線の専門家らに意見を聞いた。また、枝野官房長官の記者会見で、政府の考える「最悪の事態」についても問い、その返答についても議論した。
 京都大学原子炉実験所助教小出裕章氏の想定する「最悪の事態」は、原子炉が溶け落ちて(メルトダウン)水蒸気爆発を起こし、原子炉内の燃料から放射性物質がすべて環境中に放出される事態だ。「この最悪の事態を防ぐ手段は、原子炉、使用済み燃料プールの『冷却』だが、被曝環境での作業は大変な困難をともなう。冷却を循環的に行
うポンプの回復ができるかどうかをまず注視したい。さらに、もしポンプの回復ができたとしても安定的に冷却される状態になるには少なくとも1ヶ月はかかる」と小出氏は見る。また、放射性ヨウ素セシウムに加えて、作業員が被曝したタービン建屋の水からバリウム、ランタンなどの物質が検出されたことについて小出氏は、「燃料棒を覆う部分(ペレット)が一部溶けている状態であることを示しており、炉心の破壊が進んでいるのではないか」と危惧する。
 NPO環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏が「一番現実的な最悪シナリオ」と考えるのは、爆発が起こらずとも、冷却作業を続ける間に、大気中、水中、土壌に長く放射能が漏れ続けるという事態だ。住民の避難や水道水、海産物の汚染が長期間続くことになる。飯田氏はこの「現実的な最悪シナリオ」に対して、「広範囲なリアルタイムモニタリングとシミュレーションを組み合わせる、つまり現実と予測をつき合わせたデータがなければ手の打ちようがないが、現時点では政府には司令塔が不在で、この作業が進んでいないのではないか」とみており、「被曝管理、放射能漏えい量の測定、現実的・技術的な広報」という3つを組み合わせた対策を早急に練る必要があると話す。
 25日に福島県入りし、今後現地での調査を行う琉球大学名誉教授の矢ヶ崎克馬氏は、福島県や首都圏で水道水や野菜など体内に入るものから基準値を超える放射性物質が検出されたことについて、「体内に放射性物質が入ることで起きる「内部被曝」の危惧が高まった。今は怯えている段階ではなく、被曝は避けられないという意識を持ち、できる限りの手段で防御策をとることが必要だ」と話す。
 放射線医学の専門家で元岐阜大学医学部助教授の松井英介氏は、「外部被曝では、外部からの放射線は体を透過する。内部被爆では、尿などにより体外に放出されず体内にとどまった放射性物質が、繰り返しアルファ線ベータ線を出し、繰り返し遺伝子を傷つける」と言う。
 「ただちに健康に影響はない」という説明は、皮膚がただれるなど急性症状にはならないと言っているのか、何を意味するのかの説明がない点が、われわれの不安の元になっているとしたうえで、内部被曝で重要なのは、急性の症状ではなく、遅れて発症する「晩発(ばんぱつ)障害」、もうひとつは「蓄積性」だと言う。水道水などから検出された放射性ヨウ素131は、体内では選択的に甲状腺に蓄積される。また、小さい子どもは特に影響を受けやすいため、成人男性とはまったく別の問題として考える必要があると話した。 
 あえて想定する「最悪の事態」では何が起き、そしてわれわれはどのようにその事態に備え、対処していくことができるのか。ジャーナリストの青木理神保哲生社会学者の宮台真司が、専門家とともに議論した。

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