みんなで決めよう「原発」国民投票

共同代表による声明


運動のこれまで、そしてこれから


 私たちの暮らしの現在と未来を大きく左右する原発について、自分たち自身で決めたいという一心で進めてきた運動も、そろそろ2年になろうとしています。この間、賛同人をはじめとする皆さまのお力で、国民投票についても、各地の住民投票についても、実施を求める多くの署名を集めることができました。


 にもかかわらず、今日まで国民投票の実施を具体的に展望するまでには至っておらず、また、各地の住民投票についても、多数の署名に基づく請求が議会で否決され続けていることは残念でなりません。さらに、現政権は国民的な議論なしに、いわばなし崩し的に原発再稼働へ向かおうとしており、その拙速なやり方には批判が集まっています。


 そうした中、人びとの間では、原発事故の記憶が風化しつつある面もありますが、他方で原発政策への疑念は深く広く定着もしており、各種世論調査でも、拙速な原発再稼働には批判的意見が多数を占めています。今後、一方的なやり方で再稼働がなされれば、各地で疑問の声が上がり、住民投票への要求がこれまで以上に高まることは間違いありません。


 会の発足当時から私たち共同代表が強調してきたのは、住民投票国民投票との両方が必要だということです。国民投票は、全体の意思を示し、政策に決定的な影響をもたらすことができます。しかし、その一方で、大きなリスクを背負う現地の声と、大都市など消費地の声とが、うまく見渡せないうちに混合されてしまうという欠点も持っています。


 加えて、現政権や与野党の動きを見る限り、国民投票運動がさまざまな思惑に基づく憲法改正論議に巻き込まれ、周囲の誤解や運動参加者の分裂を招く恐れも危惧されます。国民投票運動はもともと参加と包摂を旨とする市民自治をめざす民権運動であるのに、国権主義的な憲法改正に向けて国民投票の意味が事実上ねじ曲げられる可能性さえあります。


 だからこそ私たちは、立地地域での住民投票に加え、消費地域での住民投票が大きな意味をもつと考え、提起してきました。住民投票を通じて各地の多様な声が出されることは、それ自体が国や自治体の方針に大きなインパクトを与えると同時に、市民自治の貫徹をめざした来るべき国民投票に向けて、議論をより成熟させることにつながるはずです。


 さまざまな声に接した人びとは、自分の立場と他者の立場とを入れ替えて考えつつ、相互に意見をすり合わせて行くことができるはずです。そのことで、参加によってかえって分裂が促進されるという悪しき事態を避けながら、参加が包摂をもたらすような望ましい事態に向けて歩みを進めることができるはずです。


 これは「原発国民投票を含めた諮問型国民投票の実現に向けた取り組みをゆるめることを意味するものでは全くありません。住民投票の実績を重ねることも含めて、国民投票の本質が、「世論調査による政治的決定」などではなく、多数決が蔑ろにしがちな参加と包摂を、熟議を通じて達成する市民自治であることを、国会内外に伝える活動が、さらに活発化されることになります。


 こうした観点から私たち共同代表は、今後しばらくの間、私たちの会が各地での住民投票の動きに協力し、これらの運動の結節点として機能すること、そして、そのことを通じて、国民投票の望ましい姿を共有していくことが、望ましいのではないかと考えます。これからの運動のさらなる発展に向けて、力を合わせてがんばって行きましょう。

                             
                             みんなで決めよう「原発国民投票
                                    共同代表 宮台真司
                                    共同代表 杉田 敦


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